Selected Works
うしおの主な作品リスト(各作品にジャンプします)
- 《詠み人知らず「なかきよの…」》2021年
- 《不如意のティーサロン》2019年
- 《不如意の儀》2019年
- 《何かを解体してボートを作る /レッスン 1. 棺桶》2018年
- 《遠くの人影 1》2018年
- 《みがかねば曇るなにか》2018年
- 《連続しない時間・踊り場》2017年
- 《球体の亀裂》2017年
- 《Where Are You?》2016年
- 《Continue? Yes.》2014年
- 《やもめ男と美女のチェス》2013年
- 《Form a Party》2014年
- 《ふっかつのじゅもん》2014年
Aboutでも関連イベントやプロジェクト全体の説明を通して、うしおの作品や活動の相互関係を紹介しています。
《詠み人知らず「なかきよの…」》
2021年
照明、扇風機、竹、紙、粘土製置物
シングルチャンネル・ビデオ、サウンド(12分33秒)
サイズ可変
江戸時代の船頭である小栗重吉が484日間太平洋を漂流し、亡くなった仲間の石碑を帰国後に建てた話をもとに構成した映像インスタレーション。
映像は不特定の“私”と“あなた”が史料を受け取り、悪意の有無にかかわらず変容させ伝える、歴史(あるいは世界観)の伝達を意識して制作した。
薄暗い床に置かれた紙の船には七福神や人の姿に似た形態、あるいは石のような形状の置物が載っている。海という捉えにくい境界を越えて行き来する他者への期待と恐怖感を、映像と並置している。
Photo: Hiromasa Naganuma
《不如意のティーサロン》
2019年
多種類のお茶、ティーセット、カード、白い布、ティーバッグ、他
サイズ可変
TERATOTERA祭り2019の会場で、来場者に二人一組のペアになってミックスティーを飲んでもらう3日間限定のティーサロン。
不如意とは“思うようにならない”という意味があり、このティーサロンでは自分が飲みたい味のお茶を飲むことができない。
お茶を飲むための手順は次の通り。
- 一緒にお茶を飲む相手を決める(二人一組)
- カードの束からひとり3枚ずつ手に取る
- 手に取った3枚の中から自分の飲みたいお茶のカードを1枚選んでテーブルに出す
- 自分と相手が出したカードの茶葉をミックスしたティーバッグを作り、分け合って飲む
カードにはそれぞれ異なる種類のお茶の名前が記され、お茶の味は相手のカードとの組み合わせによって決まる。
なおうしおはさらに、この特別なミックスティーの使用後のティーバッグを白い布の上に置き、ミックスティーのシミを作り出すことに協力を求めた。
またティーサロンの傍らでは、小倉正史さんが蓄積した資料や書籍の「公開整理」ワークショップ等を開催した。
Photo: Haruyuki Shirai, The Museum of Contemporary Art Tokyo
《不如意の儀》
2019年
ミクストメディア
サイズ可変
室内に6つの分岐点と、11の作品を配置したインスタレーション。
分かれ道の先には映像や写真、音、家電、家具、ゲーム、ベッド等を使った作品と、時にはうしお自身がチームメイトやゲストと一緒にコレクションとアーカイブに関するワークショップをしていることもあった。鑑賞者は道の先々で日常や遊び、美術がひもづけられた様々な体験をすることができる。
本作はヘロドトスの『歴史』の一節にある、飢饉の18年間を遊びによって乗り切ろうとした古代国家の話からインスピレーションを受けて構想した。
この古代国家の失敗談は国民のコントロールに遊びをわざわざ利用しようとしたものであるが、本作は私たちの生活や文化が根源的に遊びと深く結びつき、多様な展開に至っている(アートもそのことと決して無関係ではない)ことを視覚化しようとしている。
ー私たちには遊びが組み込まれている。結果が思い通りであろうと、なかろうと。
《何かを解体してボートを作る /レッスン 1. 棺桶》
2018年
棺桶、指示書、工具、防水テープ
43(H)×53(W)×160(D)cm
必要最低限の加工と道具によって、身の回りの物や人生に不可欠な物をボートにリメイクするシリーズ作品。
人類の移動と船の関わりをリサーチする過程で、うしお自身の家系に桶屋のルーツがあることを思い出すことになった。調べるうちに桶屋は棺桶を作る仕事も担っていたことを知り、また叔母からは「私のおじいちゃんは死ぬ前に自分の棺桶を作って、死んだらそれに入れられて葬られた」という印象的な話を聞くことができた。
棺桶自体も生と死の世界を移動する乗り物であることに注目し、一番最初に棺桶を加工してみることにした。
現代日本においてはインターネットで手軽に安価な棺桶を購入できるようになっており、本作ではあえてそのような商品を採用した。
《遠くの人影 1》
2018年
紙にインクジェット、サインペン、マーブリング、ニス
15(H)×15(W)×1(D)cm
水面に船が浮かぶ至って平和な写真に、満載の人影を描き込んだペインティングのシリーズ作品。
世界中の様々な地域の民間信仰「いつの日かやってくる白い人」(文明をもたらしたり救世主となる)への興味と現実の落差に着目した。
人類は常に外の世界への期待や希望を持つ一方で、外の世界から来る人を受け入れる際にはある種の抵抗を持ち、様々な摩擦が生じる。
他者としての遠くの人影がもたらす様々なイメージ、歴史的記憶、他社への期待と恐怖感を提示した作品。
《みがかねば曇るなにか》
2018年
真鍮板
25(H)×45(W)×1(D)cm
2016年9月19日開催の移民と難民に関するサミットで採択されたニューヨーク宣言の序文1.を真鍮板に刻んだもの。
この宣言は後にトランプ政権が加盟国間の交渉過程から離脱を表明したことで知られる。
真鍮は腐食はしにくいものの、磨かずにいると黒ずみや緑色の錆のため文字が読みづらくなる。
法的拘束力を持たない理想としての「世界観」すら共有困難な世界に、宣言を顕在化させる方法を探るシリーズ作品。電光掲示板による同文の日本語訳《ともさねば消えるなにか》と対になる。
《連続しない時間・踊り場》
2017年
アクリルミラー
130(H)×240(W)×2(D)cm
2017年開催の「引込線」での展示に際して、電気の使用が難しい会場における映像装置として鏡を用いた作品。
130×40cmのアクリルミラー6枚を、階段の手すり上に横一直線に並べて展示した。螺旋階段を昇り降りする身体の正面、横、背面が、連続写真のように鏡面に映る。裏面にコーティングしてある銀の一部を溶かし除去した部分からは、背面からの光と風景が透過する。
エドワード・マイブリッジ及びマルセル・デュシャン以降、断続的に受け継がれる《階段を降りる・・・》作品群へのオマージュ。
《球体の亀裂》
2017年
地球儀にアクリル
21(H)×21(W)×21(D)cm
一本の線が暗示する地球上のパワーバランスを想像し、鑑賞するための作品。
市販の地球儀にプリントされたある黒い線のみを残し、他を白く塗ったもの。この黒い線は地球の最新の日付変更線で、2011年12月29日に変更されたもの。
日付変更線は実物を確認できないが、私たちの生活を支配する重要な設定のひとつであり、主に国家間の貿易(商業)上の都合で時勢に応じて部分的に移動してきた。この亀裂は地の果てに発生するらしく、アメリカ大陸と欧州の間には、かつて一度も存在したことがない。
《Where Are You?》
2016年
シングルチャンネル・ビデオ、サウンド
38分39秒
”白黒つけられないボードゲームシリーズ”の3作目。二人のプレイヤーがオセロらしきゲームをプレイする映像作品。
1977年、視覚障がい者向けに白と黒の駒を手触りで区別できるユニバーサルデザインのオセロが発売された。
本作では二人のプレイヤーはアイマスクを着用して、ユニバーサルデザインのオセロをプレイしている。しかし駒の裏表両面をうしおが白黒半々に塗装したことで、視覚に頼り戦況を追うことが次第に困難になる状況が映像化されている。
《Continue? Yes.》
2014年
碁石、アクリル板、碁盤
1(H)×39(W)×37(D)cm; アクリル板
33(H)×45.5(W)×42(D)cm; 碁盤
”白黒つけられないボードゲームシリーズ”の2作目。強烈な光線が作り出す影に隠されたストーリーに着目。
「広島原爆対局」とも呼ばれる第三期本因坊戦第二局中の1945年8月6日の出来事の記録からインスピレーションを得た作品。
原爆投下の朝、前日の続き106手目を並べ終えたところ、原爆が投下された。その一瞬の閃光によって生じたはずの影を作り出した。
※2014年広島市現代美術館の「ゲンビどこでも企画公募2014展」で展示した《原爆下の対局》は本作の使用パーツを一部変更したもの。
《やもめ男と美女のチェス》
2013年
シングルチャンネル・ビデオ、サウンド
3分
”白黒つけられないボードゲームシリーズ”の1作目。白黒の駒がチェスボード上を滑り、溶け出す映像。
欧米圏を中心にチェスを用いた作品は数多く存在するが、オノ・ヨーコの独自性が光る作品《White Chess Set》及び《Play it by Trust》へのオマージュあるいは返歌とも言える作品。
男女のプレイヤーがワックス製の駒を進める中、チェス盤が過熱され続け、駒は滑り、溶け合い、最後には液状化する。
《Form a Party》
2014年
カード、キャストボード、変身セット、他
イベント形式(1時間30分/1回)
複数の参加者がゲームマスターから告げられた配役でクエストを行う、1回あたり1時間30分の予測不可能なイベント。
"勇者"や"遊び人"などよくある役に応じた小道具が用意され、他の参加者とパーティーを組んで実際に街へ出て依頼をこなす。
ゲームマスターが待つ部屋からは、参加者の妄想や土着のイメージが現実と絡み合うクエストの様子を、同期モニターで客観的に眺めることができる。
2014年7月11日(金)12日(土)の二日間にわたって、HIGURE 17-15 casを中心に谷中(東京都)界隈で開催。
《ふっかつのじゅもん》
2014年
シングルチャンネル・ビデオ、サウンド
7分49秒
複数の老若男女が、聴覚と視覚にかなりの違和感がある日本国憲法前文を朗読する映像作品。
年齢・性別が様々な人々に日本国憲法前文を逆さに朗読※してもらい、その映像と音声を逆再生してつなぎ合わせた映像作品。
辛うじて日本国憲法前文と理解できる違和感のある朗読だが、映像の背景を見ると人や車両等が巻き戻されているのが分かる。
※例えば「日本国民は(にほんこくみんは)」を逆さに朗読した場合、「はんみくこんほに」となる。